11.142016
小規模基本法、持続化補助金等々についての思いを綴りました。ご参照下さい。
小規模基本法ってなに、これからどうなるの?
—小規模基本法にかけた思いと裏話—
立石裕明
(株)アテーナソリューション 代表取締役
(社)小規模企業経営支援協会 理事長
(独)中小機構全国本部よろず支援拠点コーディネーター
(独)中小機構全国本部人材支援アドバイザー
小規模企業基本法制定推進委員
「哲学が変わったのです!」小規模企業振興基本法担当官僚は、熱い思いを込めて私に語った。
この言葉こそが、今回の法律制定において、象徴的な言葉である。
講演や研修で全国津々浦々の商工会、商工会議所、支援機関、金融機関、中小企業大学校をまわり、年間数千名以上の経営者、若手後継者、職員等の方々と交流を重ねてきた。
その中で、「中小企業の製造業が、ベトナムに進出」とか「中小企業の町工場が特許を取得し、海外展開」等々の
「中小企業」という言葉にいつも、違和感を感じてきた。
海外展開や特許は我々には関係がない。売上高100億、社員200人(下町ロケット 池井戸潤著参照)いても中小企業なのである。
あえて言えば、これらは、
殆どの地域にとっては大企業であり、中小企業という感覚ではない。
小規模企業経営者から、中小企業・小規模事業者政策に関心を持っているという声を殆ど聞いた事がない。認識として、自分には関係ないと思っているのである。個人事業主であれば、企業という認識すらないのが現実である。(小規模企業≒小規模事業者)
哲学が変わった?
最初の段階から、この法案制定に向けて、関係国会議員、官僚の方々と夜を徹して数限りない議論を重ね、事業の持続的発展という文言にたどり着いた。
地域には、大きな成長発展は考えていないが、しっかりと地域に根ざし、地域を支え、雇用を守り、自己実現し、「事業の持続的発展」を第一義に考える小規模企業が殆どである。
この小規模企業を支援する事を中心に考えた法律なのである。
かつて日本は
「成長発展」する企業を応援するというのが基本であった。
私流の解釈だが、殆どの小規模企業に無縁であった。
しかし今回は「成長発展」のみならず「事業の持続的発展」を原則とした
政策体系の必要性が書かれた。
下りのエスカレーター状態の環境(人口減少、シャッター通り)で、その地域を持続的にしっかりと支えてきた小規模企業と、支援する方々に真正面から光を当て、主役にする事を国が決めたのである。
どんぶり勘定からの脱却こそが最重要課題
小規模企業の最大の強みとは、何もしていなかったこと!
企業であれば、当たり前である試算表、顧客リスト、売り上げ分析、経営計画等を作成している小規模企業は、ほぼ無いと言っても過言ではない。
言い換えれば、きつい言い方だが、「なにもしていない」のである。
毎月、棚卸しや試算表を作り、きちんと管理するだけで、効果は期待できる。過剰仕入れを5%下げれば、消費税対策は終了する。嘘のように聞こえるかもしれないが、数多くの実例が存在する。計るだけダイエットと同じ考えである。
風景化している在庫をお金に変えるのである。
毎月、管理すれば、自ずと結果がついてくる。これは、単なるコストカッター的考えではない。仕入れ額そのものを下げるので、効果は大きい。
しかも、即効性が高い。
乾いたタオルを絞るのではない。絞ったことのないタオルを絞るのである。結果は推して知るべしである。
小規模企業の事業承継は、相続税や株の承継問題ではない!
小規模企業の殆どは、債務超過、個人事業主、名ばかりの株式会社なので、上記は関係ない。
借金を継ぐ覚悟と継がせる覚悟が出来たかどうかである。
会話のない親子が、親へ感謝を表し、経営の知恵・工夫・経験を、敬聴し、簡単な計画書を作成し、見える化することから、始めなければならない。
難しいことより先に、これから始めることが重要である。
象徴的予算
その象徴が「小規模事業者持続化補助金」である。
販路開拓のために、チラシを配ることに上限50万円の補助金を出すというのである。しかも、そこに雇用が伴う場合はプラス50万、合計100万円を補助するのである。
補助金は使いにくい、面倒だという指摘にも、A4用紙5枚程度の申請で良いようになった。これも画期的である。そう、哲学が変わったのである。
青年部は経営の勉強をするところ
地域活性化には、青年部を経営の勉強する場にして、経営力強化が必須であると考える。実際にこのスキームで部員増強がなされた事例も多い。
イベント、消防団、PTA等々青年部員は日夜、地域のために
金と時間を使って奔走している。立派である。しかし、決算書は見ていない。
青年部を経営の勉強の場にして、経営力強化を切に願う。
商工会、商工会議所の位置づけに注目
商工会、商工会議所の位置づけとして、
「小規模事業者支援の中核となる商工会・商工会議所」
「商工会・商工会議所を中核とした連携の推進」となった。
今回の小規模企業振興政策において、全国津々浦々の市町村における中核の支援機関として、再び、中小企業庁が決めたのである。
復権と言っても過言ではないと感じられる。
経営発達支援計画
この計画に秘められた思いとは何か!
関係者の方々に伝えておきたいこと。
よろず支援拠点活用
従前の施策とは全く違った政策であり、小規模基本計画の中に、何度もこのよろず支援拠点活用が書かれている。
国の直轄機関として指導員の皆さんと連携を強化し、小規模企業支援を行って行くためものです。何卒、活用して下さい。
小規模企業白書刊行
ヒューマンストーリーと構造分析
中小企業庁にとって、1963年成立の中小企業基本法から半世紀ぶりの基本法制定である。
中企庁内の思い入れも別次元であった。長官の熱い言葉にそれを感じた。
随所に、この哲学が変わった旨を、ちりばめている。
小規模企業の知恵、工夫、経験の知的資産を集めました。
どうか手に取って、小規模企業支援のバイブルとしてしっかりと情報収集して頂きたい。
閣法であるという意味
議員立法ではなく、閣法にする事によって、
地方自治体への影響力を強めなければ、絵に描いた餅になってしまう可能性が高い。
小規模企業振興条例制定の優先順位を上げるために、議員立法を選ばず、あえて、茨の道の内閣が決める閣法にしたのである。
経営計画つくるくん
小規模企業経営者と、指導員の方々との、コミュニケーションツールとして作成。30分程度の会話で、持続化補助金申請書のベースがざっくりとできあがるというイメージです。
どうぞ、ダウンロードしてお使いください。
http://www.smrj.go.jp/jinzai/063743.html
https://www.youtube.com/watch?v=JWDkSyjH7Q0&feature=youtu.be
ちょこっとゼミナール
小規模企業の、どんぶり勘定からの脱却と、事業承継の動画をご確認ください。
どんぶり勘定からの脱却
https://www.youtube.com/watch?v=AEhAefCeOjE&feature=youtu.be
事業承継
https://www.youtube.com/watch?v=T9AmMflCGuM&feature=youtu.be
ミラサポ活用
メールマガジン登録をお願いします。ミラサポ総研の記事をご確認下さい。
https://www.mirasapo.jp/features/policy/vol28/
https://www.mirasapo.jp/features/policy/vol29/
各省との連携
今回の法制定において、私が出会った官僚達は、机上の空論を掲げる頭でっかちではなかった。あの激務の中で、
自ら小規模企業、商工会、商工会議所を回り、熱心に耳を傾け、この画期的基本法を、小規模企業振興こそが日本を救うといわんばかりの熱意を注いでいた。
その議論の中で、経済産業省、中小企業庁以外にも数多の、中小企業・小規模事業者向けの施策がある事を聞いた。彼らですら、各省庁にある数多の施策が、殆ど知られていない事実に愕然としていた。彼らは、今、実際の政策立案者達から直接施策説明を受ける場を設けようとしている。施策は、人から人へと伝聞されるうち、施策立案者の思いは薄まってしまい、単なる無機質な文字が並ぶ施策説明ペーパーになってしまう。従って、できれば、施策を実際に立案した張本人から、その思いを含めて説明を受けることが望ましい。彼らは、「この各省庁からの施策説明会には、できれば、商工会・商工会議所の経営指導員の方々にも参加して欲しい。東京に来れない方もいらっしゃるので、映像にしてCDに焼いて、各県連に送付する事も考えている」と言っていた。加えて、これが実現すれば、
本来の趣旨とは違う解釈で書類を突き返されるようなつらい事がなくなれば良いと思っている。大いに期待したい。
地方公共団体との連携 施策マップ
中小企業庁が、画期的なシステムを開発した。国、地方公共団体の施策を、「ぐるなび」の様に検索でき、「価格ドットコム」の様に比較でき、更には、住んでいる市区町村・都道府県・国の施策を主要分野で一覧できるシステムである。
経営指導する際、その会員の業種や規模、関心分野(例えば、販路開拓、研究開発、雇用・人材等)に応じて、施策を1枚の紙にまとめた
「マップ」を持参できるようになった。また、行政機関に対して、施策提言する際に、例えば、創業支援について、他がどのような事をやっているのか、まさに「価格ドットコム」のように比較できるようにする。このシステムは、従来から「あったらいいのに」と言われ続けてきたものである。ようやく中小企業庁が開発したという事も、前述の
小規模企業振興政策に賭ける彼らの思いの強さ故と言えるであろう。さらに、このシステムは、中小企業庁の施策だけでなく、省庁横断的に施策を入れている事である。即ち、これにアクセスすれば、全霞ヶ関の中小企業施策のみならず、都道府県・市区町村の中小企業施策にもアプローチできるという事である。
最後に
この法律が地域を救うタイムリミットだと当初から思っていた。その気持ちは今も変わっていない。
基本法制定から2年が経った。この意味をご理解頂きたい。
「法律は知らない者を守らない」よく聞いた言葉である。
わかりにくくても、使いづらいと感じたとしても、小規模企業のために哲学を変えてまで作った画期的な法律です。会員の皆さん、職員の皆さん、家業と地域を守るため、何としてでも使って頂く事を、切に切に願います。
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